BLを読んで思う……「偽装結婚」と「同性婚」のこと

安西リカさんの『甘い嘘』を読みました。


10年前に別れた元恋人と出会って、お互いにまだ相手への気持ちがあって、これは復縁できるのか・どうなのか……という、”とっても普通”で平坦な筋なのですが、めちゃくちゃよかったです。

前半部分で涙腺をぎゅぅ……っと握られてしまい、「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」と声もなく読み進めていたのですが、ひと段落ついた後半編で、今度は大興奮のハートを掴まれました。

後半部分テーマは「偽装結婚」です。(と、言っていいのかな……?)

攻めくんには許嫁がいるのですが、その許嫁ちゃんがレズビアンで。

「お互い恋人とは結婚できない身だし、お互いの恋と愛と人生を守るためにも、結婚して見せるのが一番スムーズなのでは?」という話が持ち上がって……という話です。

主人公たち2人と、婚約者のビアンカップル2人との4人でご飯食べながら、作戦会議をしているシーンが好きです。
緊張と楽しさと戸惑いとがないまぜで。

物語がどうなるのかは、ぜひ作品を読んで確かめて欲しいので書きません。
今回書きとめておきたいと思ったのは、「偽装結婚」から考えた「同性婚」についてです。


そもそも結婚ってなんだっけ?

憲法では、以下のように定められています。

憲法24条1項「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」

  • 両性(※)の 合意で成立する
  • 結婚した両者は同等の権利を持っている
  • 協力して関係性を維持してね
……という感じですね。

つまり。

結婚に必要なのは「合意」であって、恋愛感情でも性欲でもないんですよ。
それなのになんで、同性愛者が異性と結婚すると、「偽装結婚」て呼ばれちゃうんでしょう。

日本では現在、同性同士の結婚は認められていないのですが、この現状は違憲状態だろうが、と私は思っています。

政府としても、同性間での結婚は「想定していない」けれど、憲法違反とは言えない、と見解を出しています。

婚姻制度自体がどうなのか、という話はもちろんあるでしょうが、私は「さっさと同性同士も結婚できるようにしろよ」と思っています。
結婚をさせないでいる・させないでいていい根拠がない。
させないでいる権利を誰も持ってないんだし、不平等だし、おかしいでしょ。と。

「結婚の自由を全ての人に」というスローガンでの活動もあります。以下からリンクしていますので、ご一読を。
  ↓


恋情の存在も性欲の存在も、周囲が勝手に期待してるだけ。

「恋愛して、性欲の対象としてお互いにお互いを見ていて、その結果としてパートナーにその相手を選んでおり、だから結婚に至った。」というストーリーがあるって、これ、周囲が勝手に期待して思い込んでるだけなんですよね。

周囲が勝手に決めつけているだけのことなのに、両者の合意があって至った結婚でも、「偽装結婚」と言われてしまう。
これいかに。
それが「偽装」だなんてこと、誰にも言う権利はないのでは?

いや、というかもはや疑問なのですが、
「自分たち、結婚します」ときいたとして、世間一般としてまずもってそのふたりに対し、「あーこの人たちは恋愛感情と性欲とがお互いにあるんですね」なんて、みんなそんな思うものですか……?

「へー、お二人はパートナーとしてタッグ結成したんだねー!」くらいじゃないですか……??


もしも結婚する相手を騙しているのなら。しかし。

同性愛者と異性とが結婚するとして、もしも同性愛者の方がそれを隠しており、「あなたに恋愛感情があり、あなたを性欲の対象としてもいます」という触れ込みで結婚をするのだとしたら、それは確かに「偽装結婚」と言えるかもしれません。

偽装というか、詐欺とかそういう話になるかもだけど……。

そういう話なら、わかるんですよ。同性愛者と異性間だけでなく、それなら、異性間で結婚した人たちの間でも起こり得ることなので。
「本当はあなたに恋愛感情も性欲もないけど、あるみたいに見せかけてあなたを騙して結婚しました」みたいなパターン。

それは普通に「ごめんなさい」だとは、思うのです。そこに、同性愛者か異性愛者かの違いはありません。

しかし、しかし。

ここで気になるのは、同性愛者と異性間で行われた「偽装結婚」と、異性愛者同士の間で行われた「偽装結婚」とでは、世間一般では抱くイメージにズレがないか? という点です。

異性愛者間で行われる「偽装結婚」というと、偽装結婚する本人たちにはその点の同意があって、一緒に周囲を騙している、みたいなパターンがまず浮かぶ、ような気がするのです。

逃げ恥(『逃げるは恥だが役に立つ』)も、みくりと平匡さんの間で合意のある偽装事実婚スタイルでしたし。



こういう、「マジョリティとマイノリティの間では世間一般の扱い方が違う」みたいなことがあるように思われたら、それってどういうことなのか、ちょっと考えてみるのがいいと思うんですよ。

そこには、打破すべき不当な制度的不均衡があったりするので。


同性婚できないのって、やっぱりおかしいよね

どう考えてもおかしいんですよねー。

結婚する際に必要なのが同意だけなら、それが異性間の2人にしか適用できないというの、おかしな話ですよね。
異性間じゃなきゃダメな理由、ないので。

子どもが妊娠が出産がどうこう言われることもありますけど、(「生産性」とか言いやがった議員は即時退場してほしい)子どもを持たない・持てないケースなんて、別に異性間でも普通にあることなので。
異性間には認めるけど同性間には認めない、なんてことしていい妥当性、ないです。

「同性同士で結婚して良くなったら、友達同士で安易に結婚制度を利用する人たちが出てくるかもしれない(からダメ)」みたいな話も聞いたことあります。
えっ、友達同士でする結婚、よくない?!?!
楽しそう!!

しかもそれだって現状、異性の友人とならできちゃってることなんですよね。
異性間には認めるけど同性間には認めない、なんてことしていい妥当性、ないです。(2回目)

結婚て、パートナーシップ契約です。一緒に生きて暮らして協力してやっていきますね、というチーム結成みたいなもんでしょ。
相手の性別、関係なくないですか。
異性間には認めるけど同性間には認めない、なんてことしていい妥当性、ないです。(3回目)

「異性間には認めるけど同性間には認めない、なんてことしていい妥当性、ないです」って、わざとじゃないのに、3回も書くことになりました。
大事なことなので、3回も書くことになったのだと思います。大事です。

婚姻制度が、本人たちの恋愛感情を主軸に展開するものになったのって、わりと最近の話ですよね。
それまでは、恋愛感情とかじゃなく、イエ(制度)のために利用されていたわけで。

つまり結婚て、元来、恋愛感情をベースにしなくたっていいものなのだと思います。イエ制度があろうがなかろうが。
で、イエ制度がない状態で、恋愛にも必ずしもよらないで選んでいけるものになるなら、「それはまた新しいスタイルとも言えるのでは? 自由であり発展であり、進歩では?」とも思いました。

おがきちか『Landreaall』は、そのへんの絶妙な匙加減を描くのがめちゃくちゃうまい!!!! 凄い!!!! と、よく思います。



「結婚は、たかだか紙の上だけの話」なのか?

安西リカさんの『甘い嘘』では結婚に対し、「たかだか、紙の上だけの話……なのか? 本当に?」という疑義がありました。

この作品においては、その疑義へのアプローチは、主に感情面に焦点をあてて描かれています。
その描写は、私には「そりゃそうだよね」と納得できるものだったし、なおかつ、もし2人の(もしくは、4人の)状況や環境が違ってまた別の結論に至ったとしたら、それにも私はまた「そりゃそうだよね」となっただろうなと思います。

つまり「どの形が正しいのか」という唯一の答えなんてなくて、ただ、攻めくんとビアンの婚約者たる彼女とで至った結実が、あの関係性がとっても嬉しかったという点で変わりはないだろうなと。
そう思える顛末でした。

そしてちょっとメタ的には、結局は「必要なのは本人及び本人たちの納得であって、不足しているのは、『周囲の理解』と制度である」という感想も変わらないのだろうな……みたいなことを思いました。
(その「周囲の理解」だって、別に必要としていない場合は制度のみでよい! のですが)

いずれにしても、なかなか「たかだか、紙の上だけの話」とはならないよね、と思います。

そういえば同性間の婚姻制度については、凪良ゆうさんの小説『薔薇色じゃない』でもまた描かれていました。


『薔薇色じゃない』の作品全体に通底するテーマとしてメインに描かれている、とまでは言わないですが、パートナーシップ条例の話があり、同性間カップルでできることできないこと、(できるかどうかがわからず属人的な部分で左右されてしまうこと)について描かれてしまいた。

病気になったら? 入院したら? 手術が必要になったら? 死別したら? などなど。

気持ちの話だけではない、一緒に生きるときに避けて通れないところに触れています。

東京都の渋谷区と世田谷区とで、パートナーシップ条例が施行されたのが2015年11月。この作品『薔薇色じゃない』が世に出たのは、2016年6月でしたし、そのあたりも意識されていたのではないかなと思います。

凪良ゆうさん、総じて「家族になる」ことへの視点が地に足のついた柔軟さ、とても現実味と人間味のある作品描かれる方だなと思っています。
こちらもご興味ある方は、ぜひご一読を。おすすめ!


そして同性婚についてといえば、かの名作、中村明日美子さん『同級生』の最新作にして最終巻(たぶん)の『blanc』で、とってもガッツリしっかり描かれてしましたね。

パートナーシップ条例の存在がわりに浸透してきており、その有用性も一定程度あるものと看做していて、しかしそれでも、”逆に”その制度を選べていないのはなぜなのか……みたいな話とか。

『同級生』シリーズ、あまりにも名作なので、こちらもぜひ読んでください!!


(『blanc』、なぜか1巻がうまく出せなかったけど2冊並べてください、最高なので!!)

アニメ映画化されているのですが、それも本当に……本当にすばらしい作品でした……!



まとめ

……ということで、以上いろいろ書いてきました。

まとめとして言いたいのは、結局のところ
  • 異性間(マジョリティ)と同性間(マイノリティ)との間で取り扱いの差があるのは不当なので、やめよう
  • 婚姻制度、誰にとっても自由でつかいやすく、人生を心づよく生きていくための制度になれるといいな
の2点です。

「婚姻しないでも全然へっちゃらぽんでやってけるのも当然!」な社会であるべき、というのも同様にね。

私もいい大人だし、今後もこういうこと、ちゃんと言ってかなきゃなとまた思いましたとさ。

おしまい。







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