なぜ「腐」「NL」「BLはNG」がアウトなのか


私はBLをたいそう好む人間でして、二次創作も喜んで受動するタイプです。

喜んで受動はするのですが、こと「物語」にかんしてはほとんど消費するばかりのタイプでして、自分で二次創作をすることはほとんどありません。(実は自分から探しに行くことも少ないです)

とはいえ二次創作するのを楽しむことも皆無ではなく、いくつかはweb上に上がっていたりもします。(特に『BANANA FISH』ではお世話になりました)


で、そんな私の二次創作、めちゃくちゃ数は少ないのですが、その少なさでも「腐」タグが付与されていたりするのです。


私にとっての二次創作はメンタルケアなので、書いて出すという行為自体に意味があり、なので発信後に自作を読み返すことはほとんどありません。

が、時々タグだけ見て、こそっと「腐」関連のそれを削除させてもらったりしています。

せっかくつけてくれたのにごめんだけど……。


たぶん、いろんなところで言われている話なので目に・耳にしたことある人も少なくないと思うのですが、なぜ「腐」「NL」「BLはNG」がアウトだと私が考えているのか、あらためて書いておこうと思います。



1、BL趣味は「腐ってない」し、それもはや自虐ではないのでだめ。


「腐る」は基本的に悪い意味で使う言葉だという点については、きっとわりと共通認識かなと思います。

なぜBLを好むことを悪く言われなければならない????

普通におかしくないですか?

少年漫画が好き。少女漫画が好き。アクション漫画が好き。SFが好き。男女の恋愛ものが好き。そういう趣味を「腐ってる」って言わないでしょ?

なぜ「BLが好き」だけ「腐ってる!」となる????

”腐女子”という呼称が、もとは自衛のためだったり、自衛も兼ねた自虐のためだったりで育ったものだというのは認識もしています。

単なる呼称であって、実際はそんなに自分たち(彼女たち)を卑下してるわけでもなかったりする、というのも認識しています。

でも、おかしいでしょ。

だいたい自虐って、自分個人だけでなく何らかの集合体に対して使っちゃうと、流れ弾で関係ない人のことも攻撃する言葉になっちゃうんですよ。

「ブスだから」とか「ババアだから」とかもそうなんですけど、自衛のための自虐が、例えば他の”美しいと見なされない人”や”世間からババアと言われて不当な扱いを受けている人”のことを、より苦境に追い込んだりするんです。

私はBLを好みますけど、私のこの趣味は全くもって”腐ってない”し、最高の最上に楽しい超いい趣味だと思っているし、腐ってるどころかBLってかなり文化・価値観の最先端を行っていたりもするので心外です。という気持ちがあります。


みんな溝口彰子さんの『BL進化論』を読んでみないか?


自衛のために他人を攻撃するのはやめましょう。

で、で、さらに根本的な話なのですが、男性同士の性愛・恋愛関係を含む作品を好むことを腐すのって、それもはや「自虐」の粋におさまる話じゃないんですよね。

それ、もはやゲイ差別ですよ……。

男性同性間のそれが「反社会的」だとか「普通じゃない」とかいう前提がないと、自虐が成立しないんですよ。

その前提に対し、肯定的であろうとなかろうと、それを腐す言葉を選び使ってしまった時点で、男性同性間の恋愛・性愛関係に対する差別構造に乗っかっちゃってるんです。

差別は意識や意図ではなく、構造の話であり、実際にとられた言動によって行われるものですので、「差別する意図はなかった……」みたいのって、免罪にはなりません。

「気づかなかった!」はあると思うので、それはもう仕方がないので、今後はやめていきましょ??

自衛のために他人を攻撃するのはやめましょう。


ここまで書いたら、ほとんど全部書いたようなもんですかね。



2、「NL」は同性間の性愛・恋愛関係を”アブノーマル”と定義する言葉なのでだめ。


NL=男女CPのことなのですが、NLのNは「ノーマル」の意味です。

誰を害しているわけでもない、せいぜい母数が少ないってだけの性的指向を「アブノーマル」って言ってしまうの、無礼が過ぎます。

無礼、というだけならまだよいのですが(よくないですが)、現状少なくとも本邦では、同性間でパートナーシップを築く人たちは、異性間でそれをしようとする人たちと比べて不利と不遇、理不尽を強いられています。

そういう社会構造になっています。

その理不尽を強いられている人たちを、そうでない人たちがアブノーマル扱いする。グロテスクな構図です。

やめましょう。


Q,「他にどういう言い方をしていいかわからない」

 ↓

A,”男女CP”でよくないです? HLって表現も見かけます。(H=ヘテロセクシュアル=異性愛の人)


Q,「でもNLって言葉が流通してるから、便利さを手放せない」

 ↓

そうやって使い続けるから、いつまでも「NL」じゃないと不便な状況が続いちゃうんじゃないですかね。

自分でそういう、不便な環境をつくってしまっているんですよ……もうやめよう……。


特定のマイノリティを勝手にアブノーマル扱いして憚らない姿勢って、幼い人や未成年者に平気で見せていい類のものではないです。なので、その言葉を使う前にワンクッション置いて欲しい気持ちがあります。

「NL」、もはやゾーニングされるべき語ですよ……。



3、「BL」だけをアウトとするのは、同性愛(及びBLを好む人)差別でしかないのでだめ。


最近どハマりしているジャンルのワンライ主催者様の、参加に際しての”注意書き”にもBLはNG」の旨書かれていたのですが、もうほんと、ジャンル限らず、「BLはNG」「腐はご遠慮ください」ってよく見かけます。

 ※上述のワンライさんは現在、すでに表記を改めてらっしゃいます。嬉しい〜〜〜!

言うまでもなくこれ、(男性)同性愛及びBLを好む人たちへの差別でしかないので、だめです。

「BLはNG」の理由づけとしてよく見るのが、

 ・カップリングに関してはいろんな趣味の人がいるから不快な人を増やさないため

 ・性的表現の発信は控えるべきなので

 ・公式にないカップリングは堂々と発信するべきではないため

あたりの説明です。


Q、カップリングに関してはいろんな趣味の人がいるんだから、BLを見て不快になる人たちへの配慮をするべきでは?

 ↓

A、男女CPを見て不快になる人たちへの”配慮”も同様に行うなら筋が通ります。でもそれなら、「BLはNG」ではなく、「あらゆるCP表現はNG」となりますね。BL(≒異性愛CPでないもの)だけをとりたててNGとするのはアウトです。


Q、性的表現の発信を控えるべき、というのは当然では?

 ↓

A、特にワンクッションのない性的内容の発信は私もNGだと思います。レーティングとゾーニングはめちゃくちゃ大事です。でもそれなら、「性的表現はNGです」と書くべきです。


「BL」ジャンルに性的な内容が多くの場合含まれている、というのは、それそのものが重要な意味を持っていると私は考えています。

性的コンテンツを、主に女性が主体的に楽しめるというの、めちゃくちゃよいことと思いますし。

でもBLの定義に、必ずしも「性的表現を含む」って条件はないんですよ。

そして性的表現なら相応のレーティングとゾーニングが必要であるという点において、BLと非BLとの間に違いはないんです。


だから「性的表現の発信はここではやめてください」を言うときには、「性的表現の発信はここではやめてください」と言うべきなんです。

そこには、勝手にBLも含まれます。(BLじゃなきゃいいけどBLだけだめ、というのがアウトというのはわかりますよね?)


Q、公式にないカップリングは、堂々と発信するべきではないですよね?

 ↓

A、だったら「公式にないCPはNG」と書くべきですね。


そもそもですね、その物語をどう読み・どう解釈するかというのは、それぞれの読者の自由です。完全にそれぞれの自由です。

著作権者であれ”世間”であれ、読み方を制限する権利はないし、できません。

いま描かれてないだけでいつか描かれるかもしれないし、描かれないけど”そう”かもしれないし、「公式が描いていることと違うだろうけど自分はこう読んだ」「公式とは違うこういう物語が読みたい」と思うことに、なんの罪もないです。

二次創作の場合は、そこに著作権者の権利を保護するための兼ね合いが生まれてくる、というだけの話。

そしてその保護のための配慮において、その創作物がBLであるか否かは関係ありません。


※「描かれてないけどそうだった」のめちゃくちゃよき例、鳥野しのさんの『麦の惑星』全3巻、超良作なので、みなさんもどうぞ!!


まとめ;「BL」と限定しなくていいところでわざわざ限定して、差別構造を追認・強化するのはやめましょう。

という感じですね。

こういうこと書くと「うるさい」「不自由だ」「治安の悪いジャンルだと思われたら困るから、いちいち言うのやめよう」みたいに言われたりもするし、……いえ直接言われることは正直ほとんどないんですけど、ともあれ「いちいち難しいうるさいこと言うとジャンルに入ってくる人が少なくなっちゃうからやめよー」みたいな声が結構大きいことは、とっても知っています。

でもそれ、逆ですからね。

差別が平然と蔓延ってる方が平和じゃないし、差別が蔓延ってると、差別に加担したくない人が「近寄らないでおこう」って遠巻きにするし、そもそもマイノリティ当事者がファンの輪に入れません。

差別を放置する人たちの方こそ、ジャンルの人気を邪魔しているし、直接的に排除してますからね。

”差別的”なのが公式であれファンであれ、それらに無批判でいることこそがそのコンテンツを殺す。 私はそう思ってます。
なので今後とも、”BL差別”があったら「それはおかしいぞー!」って言っていこうと思います。 ”BL差別”にも限りませんが。 

私の愛するジャンルたちが呼吸しやすい場であり、あたらしく入ってくる人たちにも住み良いところであれますように。 


 おしまい。




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